先日、埼玉県秩父地域を訪れ、「テキスタイル産地ネットワーク vol.10 in 秩父」(TCN:Textile Changemakers Network)に運営サポートとして参加しました。TCNは、これまで全国各地の繊維産地をフィールドに、実践者たちのコミュニティを構築していきました。主催は、経営学を専門とする駒澤大学の大田康博先生です。今回、全国各地からおよそ40名もの方に参加いただきました。(↓現地オーガナイザーの小澤さんのnote)
https://note.com/kozamari/n/n34daf16b9716
養蚕の現場を訪ね、織元でものづくりに触れ、そして全国各地から集まった職人、デザイナー、事業者の皆さんと、これからの繊維産業について考える。
今回のFIELD NOTESでは、3回にわたってSNSでお届けした秩父でのフィールドワークを、一つの記事にまとめてご紹介します。
※以下、幼虫の写真あり。苦手な方は飛ばしてください。

最初に訪れたのは、秩父の影森養蚕所。
影森養蚕所
埼玉県秩父市の5代目養蚕農家。「誰かに必要とされる養蚕」を目指し、全齢桑育での養蚕を実践しています。

普段、私たちが目にするシルクはすでに「生地」になった状態ですが、そのずっと前には、蚕を育て、繭をつくる養蚕の営みがあります。

私は伊勢崎銘仙を起点に事業をしていますが、銘仙もまた絹織物です。
完成した着物やテキスタイルだけを見ていると、その背景にある原料や人の手、土地との関係まで意識する機会は多くありません。
だからこそ、実際に産地へ足を運び、素材が生まれる一番初めの場所を見ることには大きな意味があります。

一枚の布の向こう側には、想像している以上に長い時間と、多くの人の営みがあります。
「文化を残す」ということは、完成品だけを保存することではなく、その背景にある技術や環境、人の営みまで含めて考えることなのだと、改めて感じました。


続いて訪れたのは、秩父で織物づくりを続ける新啓織物さん。
新啓織物
1970年に新井啓一が創業した秩父の織物工場です。伝統的工芸品である秩父銘仙を企画、デザイン、製織、販売しています。秩父銘仙に代表される技法、ほぐし織りを用いて現代の生活に根差した製品としてストール、バッグ、ハンカチその他、小物も製作しております。稀有な技法であるほぐし織りの可能性と魅力をより多くの人に知ってもらえたらと思います。
新啓織物HPより

工房を訪問するのは今回で2回目。
以前には三越での催事でもご一緒させていただいたことがあり、再び実際のものづくりの現場を訪ねることができました。
織機の音、糸、道具、そして職人の手。
産地を訪れると、店頭に並ぶ一つの商品になるまでに、どれほど多くの判断と技術が積み重なっているのかを実感します。




一方で、日本各地の繊維産地では、職人の高齢化や担い手不足、生産量の減少など、さまざまな課題を抱えています。
素晴らしい技術がある。
美しいものをつくれる人がいる。
それでも、「良いものだから自然に残る」とは限りません。
つくる人だけではなく、デザインする人、伝える人、売る人、そして使う人までがつながり、技術が必要とされ続ける仕組みをつくることが重要なのだと思います。
私たちAyも、その一端を担う存在でありたいと考えています。
今回参加した「テキスタイル産地ネットワーク vol.10 in 秩父」。
この場で行われるのは、産地を巡り、ものづくりの現場を見ることだけではありません。

産地で技術を受け継ぐ職人。
ものづくりに携わるデザイナーや事業者。
それぞれ異なる地域、異なる立場で活動する人たち。
そんな人々が地域や肩書きを越えて集まり、これからのテキスタイル産業について話し、考えます。

今回、Ay代表の村上もメンバーと一緒に登壇の機会をいただき、「現代の文化と織物のあり方」をテーマにお話しさせていただきました。
Ayでは、伊勢崎銘仙を起点に、ヴィンテージ着物のアップサイクルから、図案のデジタルアーカイブ、現代の技術を活用した新たなテキスタイル開発まで取り組んできました。
その活動を続ける中で感じているのは、伝統文化は「残すこと」だけを目的にするのではなく、現代を生きる人たちに使われ、新たな価値が生まれることで、次の時代へつながっていくのではないかということです。

かつて日常着として多くの人に親しまれた織物も、暮らしや産業構造が変化した現代では、当時とまったく同じ形で残していくことが難しくなっています。
だからこそ、受け継がれてきた技術や図案、その背景にある物語を紐解きながら、「今の暮らしの中で、どのような存在であれば文化として生き続けられるのか」を考えることが必要だと感じています。

そして、この問いに一つの正解があるわけではありません。
技術を受け継ぐ職人、デザイナー、事業者、研究者、そして実際に商品を手に取る人。それぞれの立場から文化について考え、産地を越えて知識や技術を持ち寄ることで、新しい可能性が生まれていきます。
誰かに産地の未来を委ねるのではなく、一人ひとりが「自分ごと」として向き合う。
日本の繊維産業を取り巻く環境は決して簡単ではありませんが、今回集まった皆さんとの時間は、そんな状況を感じさせないほど活気に満ちていました。
文化を過去のものとして保存するのではなく、現代に織りなおし、次の文化をつくっていく。

今回の秩父でのフィールドワークと対話を通して、Ayがこれから取り組んでいきたいことを、改めて考える機会となりました。
誰かに未来を委ねるのではなく、一人ひとりが「自分ごと」として産地の未来に向き合う時間です。
日本の繊維産業を取り巻く環境は、決して簡単ではありません。
それでも、今回集まった皆さんと過ごした時間は、そんな状況を感じさせないほど活気に満ちていました。
技術を持つ人と、デザインする人。
産地と産地。
つくる側と伝える側。
それぞれが単独で活動するのではなく、互いの知識や技術を持ち寄ることで、新しい可能性が生まれていく。
「ネットワーク」という言葉の意味を、実際の人と人とのつながりを通して感じた2日間でした。

Ayは「文化を織りなおす」をミッションに、伊勢崎銘仙をはじめとする地域文化を現代の暮らしや経済へつなぐ活動を続けています。
そのために大切にしたいのが、現場へ行くことです。
資料だけでは分からないこと。
完成した商品からは見えないこと。
職人の方と話して初めて気づくこと。
フィールドワークは、過去を学ぶためだけのものではありません。
これから何をつくり、どのように文化を未来へつないでいくのかを考えるためのリサーチでもあります。
養蚕から、糸、織り、デザイン、商品、そして使う人へ。
文化は、一人の力だけで受け継がれていくものではありません。
今回の秩父で出会った皆さんとのつながりを大切にしながら、Ayとしても産地と産地、人と技術をつなぎ、新しい文化の循環をつくっていきたいと思います。

秩父でお世話になった皆さま、そして「テキスタイル産地ネットワーク vol.10 in 秩父」に参加された皆さま、ありがとうございました。
次のFIELD NOTESも、どうぞお楽しみに。

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株式会社Ayは「文化を織りなおす」をミッションに、伊勢崎銘仙をはじめとする日本の文化を、テキスタイル・プロダクト・空間・体験へと再編集しています。noteでは、ものづくりの背景や地域で出会った人々、文化を次の100年へつなぐための試行錯誤を綴ります。
新商品の入荷情報やイベントのご案内、職人のインタビューなどをお届けします。