銘仙の現役職人に学ぶ文化復活へ向けた挑戦する姿勢|Ay culture magazine

August 25, 2021

こんにちは。今日、Ay カルチャーマガジンでは銘仙の現役職人である横山さんを訪問します。
銘仙を扱うAyだからこそ、消費だけに留まらず文化を紡いでいくことを大切にしています。
まずは皆さんに衰退した銘仙を、今もなおつくる職人さんとその現状を知っていただきたいです🌿

秩父織塾工房横山

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自然豊かな埼玉県秩父のSLが横に通る横山さんの工房、秩父織塾工房横山。昨年(2020年)には創業100年目の代々続く工房です。現在は、横山さん夫婦が銘仙と染め物の生産をしています。毎週金曜日は体験教室も開催しており、コースター織り、たて糸に捺染、染め物などの体験を提供されています。体験教室はとても楽しく、勉強になる事ばかりでした。歴史的背景や技術を知識で理解していても、実際に手を動かすことでより深く銘仙を理解できました。

私はたて糸に色柄をつける捺染の工程を体験し、タペストリーを作りました。3色まで好きな色が選べるのもオリジナリティが出て素敵です。

↓体験の様子


こちらの工房は生徒さんがいらっしゃって、毎週金曜日に黙々と作業をしてらっしゃいます。皆さん、60代〜80代のおばあさま方で、おしゃべりを楽しみながら自分の作品に向き合っておられます。

公 式ウェブサイトはこちら

三代目職人横山大樹さん

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横山さんはこの工房の三代目。銘仙の継承のために日々新しいことに挑戦しています。とても優しく、ものづくりのこだわりを教えてくださいます。

三代目として活動したのは、お父様が銘仙をつくる機械を集めていたことが始まりだそうです。多くの種類の特殊な機械が銘仙の生産には必要ですが、最盛期を経て作らなくなると機械を処分してしまう工房がほとんどで、今では貴重すぎるものです。お父様はその処分されるものを引き取っていたのです。機械がなければ不可ですが、「できる環境があった」と横山さんはおっしゃいます。

銘仙のプロ“塾長“とのお別れ


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2021年3月、一度目に訪問させていただいた際に、”塾長”と呼ばれる83歳のおじいちゃんと出会いました。お名前は浅見光一(あさみみつかず)先生、塾長は銘仙の最盛期を経験した元職人さんで、機械の故障の原因を解明したり、生徒さんの指導をしたりと、銘仙の14工程全てを知っている方でした。そんな人材、日本中探してもいないのが現状ですし、工房の皆さんが必死に色々学んでいるようでした。

2021年8月6日、二度目の訪問。

「なんだか、静かだな」とよそ者の私は感じました。

塾長が1週間前にお亡くなりになったと聞きました。生徒さんも横山さんもとても残念だと、口を揃えて「塾長がここに座ってるさ」とおっしゃっていました。

「やっとスタートラインに立てたのに、これからなのに。塾長がいなければ手探りでやらなければいけない。」

そう生徒さんがおっしゃって、銘仙のノウハウを探ることは時間も労力もかかるから、5年くらいかかってしまうと聞きました。

技術が口頭や体感で継承されてきた難しさを改めて感じました。もちろん文章で残っていてもそれだけでは難しい。機械、文章、図、動画、そして教える人。その保存が重要だと思います。


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生徒さんが織っている様子

こだわりのものづくりを発信する

「本質をついたクオリティの高いものをつくりあげる」

と横山さんはおっしゃいます。緯総絣という技法で銘仙をつくることに挑戦をされています。質を追求し、イギリスで評価を貰い、文化継承につなげる計画をされています。

緯総絣(よこそうがすり)
経糸は無地で緯糸に柄を染める技法。併用絣の技法で緯糸を染め、経糸は無地。華やかな併用に比べシックで落ち着いた感じで、緯総を好む人も多くいます。昭和50年に通産省(当時)から伝統的工芸品に指定されています。

現状、銘仙をつくって販売する収益と労働は合っていません。それは、技術より低い評価があるからです。そこを打破するために、横山さんは新しい挑戦をしてらっしゃいます。

文化を継承するためにはつくったものが正当な価格で売れるような経済的循環をつくることが重要です。そのためにAyもより一層、このような発信や商品の開発を取り組みたいと思います。